愛はどうして公正さよりも人気あり、重んじられているのだろうか。
どうして愛についてだけ人は多く語り、ひっきりなしに愛を賛美してやまないのだろうか。
公正さのほうが愛よりも知的なものではないだろうか。
愛は公正さよりもずっと愚かなものではないだろうか。
実は愛がそんな愚かなものだからこそ、すべての人にとって心地がいいのだ。
愛は尽きぬ花束を持っていて、愚かなほど憎しみなく愛を与えてやまない。
相手が誰であろうとも愛に値しないものであろうとも、不公正な人間であろうとも、
愛を贈られても絶対に感謝などしない者であろうとも。
雨は善人の上にも悪人の上にも分けへだたりなく降るが
愛もそんな雨と同じで相手を選ばずに与え、びしょびしょに濡らしてしまうのだ。
「人間的な、あまりに人間的な」より