人間であることの宿命

 

この生の中で多くの体験をしたあげく、私たちは人生を短いとか長いとか富んでいるとか貧しいとか、

充実しているとか空しいとか判断している。

しかし、自分の眼がどこまでも遠くを見ることがないように、生身の体を持った私たちの体験の範囲と距離は、

いつも限られているのだ。

耳もすべての音を聞くことはない。手もすべてのものに触れることはできない。

それなのに大きいだの小さいだの、固いだの柔らかいだの、と勝手に判断している。

さらに他の生き物についても勝手に判断している。

つまり最初から限界があるのに、自分たちの判断が間違っているかもしれないということに気がつかないでいる。

これが人間であることの大小さまざまな宿命なのだ。

「曙光」より

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