愛するとは、若く美しいものを好んで手に入れたがったり、優れたものを
なんとか自分のものにしようとしたり、自分の影響下に置こうとすることではない。
愛するとはまた、自分と似たようなものを探したり、嗅ぎ分けたりすることではないし、
自分を好むものを好んで受け入れることではない。
愛するとは、自分とはまったくの正反対に生きている者を、その状態のまま喜ぶことだ。
自分とは逆の感性を持っている人をも、その感性のまま喜ぶことだ。
愛を使って二人の違いを埋めたり、どちらかを引っ込めさせるのではなく、
両者の違いのまま喜ぶのが愛することなのだ。
「漂泊者とその影」より